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TMS理論(Tension Myositis Syndrome)緊張性筋炎症候群。

私が仕事をする上で影響を受けたものが二つあります。

その一つが「TMS理論」もう一つが「ヘラーワーク」に代表される「ボディーワーク」です。

ボディーワークとは簡単に言いますと、「身体の使い方の誤解を解く」と言う事で、これにもメンタルが大きく関係しますが、今回は割愛させて頂き、もう一つの「TMS理論」の方の紹介をさせて頂きます。

 

「腰痛は怒りである・・痛みと心の不思議な関係」春秋社(長谷川淳史著-はせがわじゅんし)

と言う本が有ります。

 ここには「腰痛放浪記、椅子が怖い」で“自らの腰痛が心身症であった”体験を書いた作家、夏樹静子さんも推薦されている本で、「TMS理論(Tension Myositis Syndrome)緊張性筋炎症候群」に基づく「痛みの原因」について書かれてあります。

ここに少しその名著の概略を書いてみます。

 このTMS理論とは、ニューヨーク大学リハビリテーション医学教授、ジョン・E・サーノ医師が1987年発表した物で、その中に有る「筋炎」とは、筋肉に「炎症」が有るということではなく、“筋肉の中に何らかの変化がある”という意味で、サーノ博士はこれを「痛みを伴う筋肉の生理的変化」と言っています。

そこでは、肩こりから、腰痛、手足の痺れ、五十肩、その他の関節の痛みまでが共通した原因による一つの症候群だとしています。

その理論発見の経緯ですが、

小児科医だったサーノ博士がリハビリテーション医学に転向し、そこで、教科書で学んだ検査所見と、実際の現場での臨床症状が違うことに疑問を持ったのが始まりだそうです。

例えば、

多くの場合、腰痛は“腰椎や椎間板の老化によって起こる”とされています。

実際に彼が患者の訴えと、レントゲンに写る病変とを調べたところ、患者の訴えている症状は、レントゲン写真に写る病変とは全く関係の無い部位に現れたのです。

しかも、

病変の程度と痛みの程度も同じではなく、ほんの少しの変形でも動けないくらいの痛みの人と、見るも無残な状態でも痛みの軽い人が居たのです。

 何かに神経が圧迫され坐骨神経痛が起きているはずなのに、その何かは何処を探しても見つからず。

 もちろんその逆の場合も有り、変形が強かったりヘルニアが大きいにもかかわらず、軽い坐骨神経痛しか訴えない患者が居たのです。

そして、なによりも不思議だったのは、検査で見つかった病変に変化が無いのに治ってしまう患者が居る事でした。

 他にも、腰痛の原因が、不良姿勢、運動不足、外傷、骨の先天異常等だと言われていましたが、いくら医学文献を調べて見ても、こうした要因による“痛みの発生のしくみ”は明らかに成っていなかったのです。

 

これはいったいどういう事なのか、現代医学が間違っているのか、それとも自分だけの妄想にすぎないのか?「そんな事もある」と多くの専門のリハビリテーション医なら言うところ、元が小児科医だった博士には不思議でたまらなかったそうです。

さらに、疑問に思ったのが、治療の効果が一定せず、「重症者が早く治ったり、軽症の人が何時までも良くならない」とまったく予後の検討が付かなかったうえ、全体の治療成績を見ても、「時には効果が有るように見える」程度に過ぎなかったのです。

 小児科に居た時は、こんな事は無く、教科書通りに診療をしていれば確実と行かないまでも、ある程度の予後は推測できたのです。

 

その様な疑問を持ち続けながら患者を診ていくうちに、彼は腰痛患者の痛みは、骨や軟骨から生じているのではなく、筋肉に原因が有る事に気がついたそうです。

 さらに興味深い事に、筋骨格系疾患の患者の病歴を調べると、緊張性頭痛、偏頭痛、胸焼け、胃酸過多、食道裂孔ヘルニア、胃十二指腸潰瘍、大腸炎、過敏性大腸炎、麻痺性大腸、花粉症、喘息、前立腺炎、湿疹、乾癬(かんせん)、にきび、めまい、耳鳴り、頻尿、反復性膀胱炎、などの病歴を9割の患者が持っていたのです。

そして、これらの病気の共通点が全て「心身症」と呼ばれる病態だったのです。

参考 心身症

http://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%BF%83%E8%BA%AB%E7%97%87

 

要するに「筋骨格系疾患を抱える患者の多くが、心理的緊張によって生じる病態(心身症)を過去に経験していた」のです。

と言う事でTMS(Tension Myositis Syndrome)「緊張性筋炎症候群」の緊張とは“こころの緊張”の事を言って居るのです。

 そして、博士が腰痛に心身症を疑うように成ってから、何気なく心理的要因を探りながら診察を続けて行くと、早く治る患者と治らない患者がほぼ正確に予測できるように成ったのです。

 

さらに、その中で、痛みの原因がこころに有る事を認めた患者は、それを否定した患者に比べると、より早く改善している事にも分かったのです。

 

この発見によってサーノ博士は筋骨格系疾患に対するもっとも重要な治療的要素は、自分の身体に起きている事を、本人が正確に理解する事だと確信するようになりました。

 そして、それを患者に理解させる事が、筋骨格系疾患の「特効薬」に成ると言う結論に達し、これがTMS理論の始まりでした。

 

同書では、少し極端な考えかたをしています。

 と言うのは、この「特効薬となる情報」が「医学会に流布している呪いを解く為の情報」と言って居るのです。

具体的に「老化現象、外傷、運動不足、不良姿勢、先天的異常等は、身体の構造異常、腰下肢痛とは一切関係が無い」

と言い

「こうした誤った情報「呪い」を信じている限り、不安や恐怖によって痛みが強くなるだけで無く、治癒が遅れたり、再発する可能性が高くなる」と言って居るのです。

 

また、神経症の判定の為の心理テストの結果では、 通常の内科の患者より、筋骨格系疾患の患者のほうが ストレスに敏感という結果が有り、

『ストレスで胃に穴があく可能性より腰痛になる可能性のほうが強い』
と言う事が出来ると述べています。

次に、どのようにしてストレスから痛みが引き起こされるかですが、
ストレス学説のセリエ博士は

「ストレスは、生体への刺激に対する非特異的反応」で、

刺激をストレッサーと言い、
環境要因を外的ストレッサー、
心理的要因を内的ストレッサーとしています。

ここでの、非特異的反応とは、
ストレスを受けた時の生体反応の事で、

「警告反応期」「抵抗期」「疲はい期」の三つがあるとしています。

それは、ストレッサーが自律神経を刺激する事で起こる反応で、“身を守る正常な物”と、“心身症のような異常なもの”が有ると言っています。

自律神経の中枢では、身の危険を感じると、 即座に戦闘体制モードにスイッチが入ります(交感神経の興奮状態)その時、身の安全を守る為に

「闘争か逃走」、「戦うか逃げるか」のいずれかの反応が起こるのです。

 

その緊急事態では、心拍数や血圧が上昇しますが、 反対に不必要な消化吸収や排泄機能は停止します。

それが「警告反応期」
“闘争”もしくは“逃走”に必要な筋肉に大量の血液が送り込まれます。

その次が、緊張して心臓がどきどきする状態などの「抵抗期」です。

そして、最後に慢性的なストレスに疲れきった、ストレスに適応できない状態の「疲はい期」が有ります。

そして、この闘争逃走反応における現代社会の問題点が「その反応が起こっても戦う訳にも逃げる訳にも行かない状況「被はい期」に多くの人々が置かれている。」 事で、「全身の器官の機能を自動的に調節する働きをしている自律神経は、その、慢性的なストレスを受けることで、調子を乱し、さまざまな心身症を引き起こす」 状態に有るのです。

この事は皆さん自身が体験したり、 周りに思い当たる人が居たりして実感されていると思います。

余談ですが“便秘”に悩む方が居ます。
科学的根拠は無いのですが、その中に“鹿のフン”の様な便の方がいます。

ひょっとすると、その方の身体は「非特異的反応」を起こし、 排せつ機能が停止しているかも分かりません。

 

それでは、次にTMSが起こる仕組みと好発部位(よく出る所)について紹介します。

TMSでは痛みの直接的原因は、「血流不足による酸素欠乏」としています。

ストレスにより交感神経が興奮し、全身適応症候群が起こるのですが、その際、副腎髄質からは大量のアドレナリンとノルアドレナリンと言う ホルモンが分泌されます。

これらのホルモンには心拍数や血圧を上昇させるだけでなく、 血管を収縮させ血流速度を速め、不必要な器官への血流を押さえ、 素早く筋肉に血液を供給する血管収縮作用が有ります。

ところが、ストレスが長引いて「疲はい期」の段階では、いつまでも他の器官を犠牲にする訳にはいかなくなってきます。

生命を維持するために必要な器官にも血液を供給しなくてはなりません。

ですが、依然として慢性のストレスが加わっている場合は、アドレナリンとノルアドレナリンの分泌はさらに続き、
その状態を維持する事から様々な弊害が出て来ます。

これが「血流不足による酸素欠乏状態」なのです。

簡単に言いますと
“慢性的なストレスによって酸素の欠乏”が起こり、身体が虚血状態に成るのです。

その結果
*科学的老廃物の蓄積
   この老廃物は主に乳酸と言う疲労・発痛物質で、通常は血液の循環により蓄積される
   事は有りませんが、血流量が減少する事で筋肉内に蓄積され、筋肉痛を起こします。

*筋肉の痙攣(けいれん)・・・自律神経を介しての血管収縮の為長時間続きます
   筋肉は血流量の減少で酸欠状態を起こしその結果痙攣を起こします。
   これはこむら返りと同じものですが、自律神経を介して血管が収縮している為、
   短期間では治まらず、たいていは数日間かかり、心因的な原因が有る場合では、
   数週間、数カ月続く事も有ります。

*神経麻痺(まひ)・・・筋肉より神経の方が酸素欠乏に弱い
   神経は筋肉より繊細な為、わずかな酸欠でも症状を出して危険を知らせます。
   その神経の血流の減少は、腕の神経や坐骨神経の様な末梢神経の酸欠を起こします。
   一般的な酸欠での症状は「痛み」ですがさらに酸素濃度が低下すると、さまざまな
   知覚異常や、筋力低下等を引き起こします。

 

それではその痛みは何処に多く表れるのでしょうか?

TMS(緊張性筋炎症候群)とは言いますが、 筋肉のほか神経、腱や靭帯にもその症状は現れます。

そして、筋肉の痛みの場合は“姿勢筋”に出やすい傾向が有ります。

姿勢筋とは、首の後ろ、肩の上部、背中や腰、そして臀部の筋肉を含み、 姿勢を保つと共に、腕の運動を助ける働きが有ります。

そしてTMSの興味深いのは、ある特定の筋肉に痛みが生じる訳では無く、かなりの広範囲にわたり痛みを感じたり、
複数の筋肉が痛いと訴える患者が多い事が有ります。

しかも、その痛みは、日によって強さが変わったり、 場所が移動する事さえあるのです。

この事からも、従来の原因論は誤りである事が分かります。

例えば変形性脊椎症と診断された腰痛患者が居たとしましょう。

この場合は腰椎に出来た骨棘が痛みの原因なので、ごく限られた範囲にしか症状は出ないはずですし、 日によって痛みの強さが変わるはずは有りません。

何年もかけて形成された骨棘が、 伸びたり、縮んだりするとは、とうてい考えれ無いからです。

ましてや痛み位置が左右逆転したり、背中や首に移る等、理論上ありえず、その痛みは骨棘が存在する限りどんな治療を受けても消える訳が有りません。

しかし、TMS理論のように、 痛むのは姿勢筋であると考えるならその事も理論上可能に成ります。

痛みの原因が身体自体に有るのではなく、ストレスによる一時的な酸素欠乏だという立場を取るからです。

ですから、身体に原因を求めて身体を治療している限り、 問題は何も解決しないと言っているのです。

 

次にTMS(緊張性筋炎症候群)の症状が神経に出た場合ですが、主に神経痛となって、多くは太ももの後ろからふくらはぎ、脛にかけての痛みやしびれが出る坐骨神経痛です。

次に多いのが腕から手にかけての上腕神経痛で、どちらも痛みやしびれ以外に筋力の低下や、感覚の麻痺もあります。

その他は肋間神経痛、三叉神経痛等が有り神経が通る所は全てTMSに冒される可能性が有ると考えられます。

 

それでは、神経が侵された場合の症状とは具体的にどのような物なのでしょうか?

例えば、痛みでは、刺すような痛み、電気が流れるような痛み、切られるような痛み、燃えるような痛み、ずきずきする痛みが有り、しびれでは、ちくちく感、冷感、温感等のほか、触っても何も感じない事もあります。

そこで、大事なのは、“神経の痛みは日によってその症状が変化する”と言う事なのです。

例えば右足の坐骨神経痛に悩まされていた人が、ある日を境に左足に痛みが移動したり、 昨日まで太ももの後ろが痛かったのに、 今日に成ると脛の前が痛くなる。

 

神経の症状は筋肉痛以上にめまぐるしく変化するのです。

でも、その強さや場所も変わる原因は、 「脊椎周辺の構造異常」では説明する事は出来ないのです。

例えば、もし神経痛の原因が、 変形性脊椎症や椎間板ヘルニアなどの“構造の異常”にあるなら、 症状は変化することなく一定の状態が続くはずなのです。

骨棘が伸びたり縮んだり、髄核が出たり引っ込んだりする事は無く、 確かに髄核が自然と元の位置に戻ったと言う報告は有りますが、 日によって場所や強さが変わったり、 左右が逆転する事は、脊椎周辺の構造上ではまったく説明がつかず、 痛みの“状態がめまぐるしく変わる”原因は説明が出来ないのです。

 

そこで同書は、
「心身に置いて“状態がめまぐるしく変わる”のは“身体”では無く“こころ”のほうなのです」
としています。

さらに、TMSは筋肉や神経だけではなく、 筋肉と骨との付着部分に有る腱や、 骨と骨とを連結させる靭帯にも影響を与え、 関節痛や腱痛にも症状が現れるとしています。

それでは、これまでの事が正しいのなら、 全ての腰下肢痛の人がストレスを感じているのでしょうか?

TMSではその重傷度を

*症状の強さ
*症状の維持期間
*恐怖心による活動制限の程度

の三つを総合的に見て判断しています。

しかし、不思議な事に、重症患者ほど「ストレスは無い」と断言する傾向が有るのです。

 

もしこの事が事実なら、TMS理論は根底から覆されますが、 実際は生きている限り外的ストレッサーは避けられず。

感情を持っている人間ならば内的ストレッサーも毎日生まれているはずです。

 

では何故、重症のTMS患者ほどストレスを感じないのでしょうか?

同理論ではその事を

「あまりにも強いストレスなので防御機制が働くから、ストレスによって起こる感情に気がつかなくなっているだけ」

で、これがTMSの根本原因なのです。

 

同書には、
「緊張は無意識下で生み出され、ほとんど無意識の外に出る事は無い感情を示します。その多くは、不快、苦痛、決まり悪さを伴う感情で、 本人にも社会にも認められず抑圧されています。

 

抑圧が起こるのは、
『これらの感情を味わいたくない』
『これらの感情を抱いている事を人に知れたくない』
と心が思うからです。

如何せん、
“人間の心は、無意識下の感情を自覚するようには出来ておらず”、 瞬く間に、しかも自動的にこれらの感情を抑圧してしまいます。

私たちは自分を見失ったり、パニックなるのを避けるために、 不快な感情を極端に毛嫌いする傾向が有ります。

『とにかく忘れよう』
『考えないようにしよう』
『無視しよう』
『なかった事にしよう』
などと、不快な感情を意識から締め出してしまうのです。

 

それもほとんど考えずに、自動的にそうしてしまいます。

さらに悪い事に、自分がそうした事を忘れてしまうのです。

これが抑圧の正体です。

 

しかし、この抑圧した感情がふとした事がきっかけで再び浮上してくる事が有ります。

その再浮上は、当人を困惑させパニック状態に陥れ、その解決の為、“不快な感情から意識の目をほかに向けさせる”ようにするのです。

それには「痛み」が最もふさわしく、 身体に痛みが有ると本人の意識を身体に引き付けておく事が出来るのです。

抑圧に失敗し、不快なものが意識に上ってきても、それを見なければいいのです。

痛みに注意を向けておけば、心の安定は保たれ、精神的な破局を避ける事が出来るのです。

だからこそ、重症のTMSの患者ほど、ストレスを否定するのです。

 

サーノ博士はこう言っています。

「痛みは注意をそらすための物だという事実に気付かずにいるかぎり、 何物にも邪魔される事無く痛みはその目的を果たし続けるだろう。しかし、いったんその事実を認識ししっかり理解するや(単なる認識では不十分で、しっかり理解しなければならない)ごまかしは通用しなくなり痛みは消える。 痛みの存在理由が無くなるからだ。これをやってのけのけるのがまさしく情報なのである」

TMSは不快な感情から注意をそらすために存在するのです

 

では逆に不快な感情に目を向けるとどうなるでしょう?

見たいとも思わなかった物にしっかり焦点をあわせじっくり観察してみるとどうなるでしょうか?

他にもまだ無意識のうちに注意を向けまいとしてきた感情が沢山あるかもしれません。

それらにサーチライトを当ててみましょう。

すると注意をひきつけることが目的だった痛みはもはや必要が無くなって消えるしか仕方有りません.つまり、防御規制が解除されると言う事です。

こうした情報を患者に提供する事がTMS治療プログラムで有り「認識療法」と言われる由縁なのです。

 

それでは
「意識、無意識がそこまでして抑圧しなければならない感情とは何なのでしょうか?

その感情の一つが、“怒り”なのです。

 

私たちは、小さなころから怒りを表に出す事は悪い事だと教えられて来ました。

さらに、社会生活においても、怒りを出すのは未成熟な人格だと言われてきため、私たちは怒りを抑制しているのです。

ところが、それを抑圧する事を長く続けているうちに、いつの間にか怒りを抑える事が習い性となり無意識にそうするまで成ってしまったのです。

そのほかにも、好まれない感情として、“不安、心配、恐怖、悲しみ、抑うつ、後悔、自責の念、罪悪感”などが有ります。

しかし、怒りの感情はそれらよりはるかに強く、抑圧しきれない物なのです。

 

抑圧された怒りはおおむね次の三つに大別できます。

1. 日常生活におけるプレッシャーによる怒り。
2. 幼少期に受けたトラウマによる怒り
3. 欲求を満たすために自らに課したプレッシャーによる怒り

1.についてはその人が一日の中で一番多く過ごす場所を探せばすぐに見つかります。

2.については久留米大学医学部の長沼氏の報告として
「どんな治療にも反応しない慢性疼痛患者の臨床経験からその共通点として
「幼少期における両親との不幸な交流を言い、 具体的には、体罰を下す父親、心気的で身体面にのみ関心を払う母親、
そして両親の離婚や、死亡などを経験している」としています。

これを固定的にとらえる必要が有りませんが、
いずれにせよ幼少期に受けたトラウマから生じた怒りは決して消える事はありません

最後に3.ですが「完全主義者」「善良主義者」とサーノ博士は言い、それを次の六つの根本欲求を持つ「タイプT性格」としています。

1.完璧で有りたい。
(高い理想と道徳的規範を持つ、自己批判的で他人の批判に敏感)
2.人に好かれたい。
(愛されたい称賛されたい尊敬されたい人を喜ばせたい世間から良い人と言われたい)
3.見捨てられたくない。
4.満足したい。
5.強靭な肉体で有りたい。
6.死にたくない。

日常生活のストレス、幼少期のトラウマ、タイプT性格の三つが重なって無意識に怒りが蓄積され、 臨界点に達してTMSに成り、そしてその怒りが強いほど重症に成る。

以上が、TMS理論の要約に成ります。

 

それではTMSに成らないようにするにはどうすればいいのでしょうか?

怒らないようにすれば良いのでしょうか?

いいえ、怒らないようにする事は無理です。

もしそう考えたならかえって抑圧が強まる場合もあります。

そもそも怒りとは、有る状況に対する情動反応の一つで、 急激で一時的な感情である情動そのものは善でも悪でもありません、ただそれは「怒り」と呼ばれているだけなのです。

 

それなのに怒りを嫌悪し、見ない風にしたり、忘れようとしたり、 考えまいとするから、いつの間にか怒りが蓄積されてしまうのです。

だから、その情動“怒り”が湧いてきても、どのような価値判断もせず、ただそれを観察するだけで良いのです。

その事が、TMSの治療につながって行くのです。

 

それでは次にTMS治療プログラムについて簡単にお話しします。

TMSの治療においては、

まず腰痛に関する「神話」を暴いて「呪い」を解き、TMSの仕組みを理解して心の「防御規制」を解除する必要が有ります。

しかし、それはなかなか難しく、今まで説明した情報を与えても、 患者がそれを受け入れなければなりません。

 

サーノ博士は、
「意識レベルの理解だけでは不十分で、 無意識レベルでしっかり理解することが必要で、それには4~6週間必要だ」
と言っています。

ただし、もし無意識レベルまで受け入れる事が出来れば、TMSはきわめて高い確率で改善するとしています。

 

では、治療の実際ですが

1.まず現代医学の標準的な手順、理学検査、画像検査によって
  “危険な疾患の有無”を確かめる。

2.次に先に述べたTMSに関する講義を受ける
“TMSを解決するコツは、痛みを感じた時に、怒りとその理由について考える事に尽きます”
「身体に注意を奪われる事無く、心に注意を向ける習慣を身につける事が最も重要なポイント」
であることを患者に理解してもらう為の講義を受けてもらうのです。

そして、腰下肢痛患者は自分自身にこう断言出来るようにまで、TMSを理解する必要が有ります。

「私の背骨は正常だ。この痛みはまったく無害な物で有り、
心理的な目的を達成するため生み出されたトリックだ。

 

そして、レントゲン撮影、CTスキャン、MRIで見つかった構造異常は、しわや白髪と同じ正常な老化現象にすぎない」
と言えなくてはならないのです。

そして、この段階まで来ると約80~85%の患者が数週間のうちに症状をほぼすべて消失させたとしています。

3.グループミーティング
ここでは、講義を聞いた後、4~6週間経過しても改善しない患者と、 一度は改善したものの再発した患者同士、TMS理論の復習を行います。

 

TMSの再発する理由には次の様な物が有ります

1.認識療法だけで症状が消えるとは本人が十分に信じていない

2.TMSの診断は受け入れているが、  画像診断で見つかった構造異常も痛みに関係していると思 い込んでいる

3.言葉の上では理解できても、まだ無意識レベルまでは理解が浸透していない。

4.周囲の情報に振り回されている

5.TMS理論を受け入れてはいるもののまだ体を動かす事に恐れを抱いている。

6.幼少時のトラウマが大きい

7.日常生活のストレスが大きい

以上の様な事をグループの中で、他人の経験を聞いたり、疑問について討論したり、 何回も何回もTMSに関して話会う事で、TMSの理解が一層深まり、 自分自身の生活を客観的に見るように成ります。

 

(TMS解決のテクニックですが)
毎日の注意として、つぎの事を複唱します。これはアファーインフォメーションと言い、「確信に満ちた肯定的な言葉を口にしたり紙に書いたりする事によって感情や行動、固定観念を変化させるテクニック」なのです。

1. 痛みは構造異常ではなくTMSのせいである
2. 痛みの直接の原因は軽い酸素欠乏で有る
3. TMSは抑圧された感情が彦起こす無害な状態である
4. 主犯たる感情は抑圧された怒りである
5. TMSは感情から注意をそらす為だけに存在する
6. 背中も腰も正常なので何も恐れる事は無い
7. それゆえ身体を動かす事は危険ではない
8. 痛みを気にやんだりおびえたりしない
9. 注意を痛みから感情の問題に移す
10. 自分を管理するのは無石井ではなく自分自身で有る
11. 恒に身体にではなく心に注意して考えなければならない

痛みを叱る
怒りに対し「何が起きているか知っているし、その痛みが無害なのも、 怒りから注意をそらすトリックなのも知っている」と告げ「もう注意を向けたり怖がったりしない」と宣言するのです。

活動を開始する
長年慢性腰痛に苦しんできた患者には出来ない動作が沢山あります。
身体を動かすのが怖いからです。
サーノ博士は「動作恐怖症」と名付けています。
ただ注意しなければならないのは、身体を動かし始めるにはTMS理論をしっかり理解してからか、 明らかに症状の軽減が確認できてからにする事

それ以外にも同書では幾つかの心理療法がTMSの解決に有効だとしています。

 

最後に、私の整体院に来られる方は大半が肩コリや腰痛の方ですが、やはり多くの方がこのTMSが疑われます。

「朝起きてすぐに肩がこる、起きた時には肩が凝っている、肩が凝って目が覚める」その多く方の腕は、堅く棒のように成っています。

「マッサージを受けてもすぐに腰が痛くなる、何時も腰が張っている」 同じように、お腹が堅く岩の様に成っています。

怒りで、寝ている時もげんこつを握り締めているのでしょうか?
四六時中お腹から力が抜けないのでしょうか?

 

私は、腰痛の原因に老化や、外傷などが一切関係ないとは言いませんが、腰痛を訴える人の多くが、痛みが取れない不安から、必要以上に「呪い」を信じてしまっている症例に多く接してきました。

貴方の痛みについて一度考えてみてください、

貴方の痛みはTMSではないでしょうか?