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2018.3.6岸和田健老大学講演内容

2018.3.6

岸和田健老大学平成29年度3学期・・・カウンセリングを学ぶ

「痛みの不思議・こころが作る慢性疼痛」

私は、大阪北区天神橋でメンタルヘルス&ボディーワークの整体院をしている竹村と言います。

ここでさせていただいている話の多くは、私が仕事を通して常に感じている心と身体の関係です。

仕事で体験した不思議なことを自分なりに調べ学んだことが中心で、少し医学的な内容もありますがあくまでも医学関係の資格があってお話しているのではなく、私が経験した出来事として聞いて頂きますようお願いします。

私は施術をした後で、「痛み止めを服用してください」と市販の鎮痛薬をお勧めすることが有ります。

急性腰痛、ぎっくり腰などの場合がそうです。

*当然ですが、事前にいろいろなお話を聴き、前提として明らかに筋肉の変調に原因があると考えられる場合だけです。(腰痛の原因は多岐にわたり軽々に原因が筋肉とは特定できない)

「整体って、身体に直接手技を施すことで身体の不具合を治すんやないの?薬!ましてや痛み止めを勧めるってオカシイの違う?」

って声が聞こえてきますが、そうではありません。

痛みを感じることで、「回復が遅れる」ことが有るのです。

場合によっては、一時的にその感覚を麻痺させることが、施術と合わさって回復を早めるのです。

その辺りの事を、今日はお話させていただきたいと思います。

 

痛みは身体の警報器

私たちが感じる痛みとは、身体に何か危害が加わったことを伝える感覚です。

身体の警報器のようなものです。

危害には、怪我などの外的な物と風邪などの内的なものがあります。

たとえば、怪我をすると、そこから痛み物質が出ます。

それを全身に張り巡らされている末梢神経が感知し電気信号にして、脊髄を経由して脳に伝え、その電気信号が伝わって初めて脳が「痛み」と認識するのです。

痛みが認識されることで、「危害が加えられた」ことを私たちは知るのです。

 

痛みの伝わり方

痛みの伝わり方には、二種類があります。

一つは、大脳皮質に、「何処に、どれぐらいの強度で、どのような質の痛み」が起きたかの情報が瞬時に伝えられます。

もう一つは、視床から大脳辺縁系に伝えられる情報で、悲しみや怒り喜び等の「情動」に関わる物です。痛みの情報が、大脳辺縁系にある偏桃体で、「生存に不利益をもたらす」と判断されると、嫌悪、不安、怒り、恐怖などの、「負の情動」が発生します。

つまり、脳が痛みを「痛い!」と言う感覚だけでは無く、喜怒哀楽などの「心」と連動させるのです。

身体に危害があり、「痛み」が起こると、不快な感情が湧くからこそ、身体が危機にさらされていることに気付き、「治そう」とか、「避けよう」とかの行動をとるのです。

痛みを脳は記憶します

また、脳は痛みを記憶し蓄積します。

その結果、過去に経験した痛みを伴う出来事と同じようなことが起きた場合や、同じような事態が予測される場合に警告し、私たちを危機回避の行動に導きます。

*野球のボールが当たると痛い!→ボールが飛んでくると避ける。*火にかかったヤカン。

我々は本能的に、不快を避け、快を求めて生きています。

その主な「目安、シグナル」が痛みなのです。

その痛みを感じるからこそ、生命を危険から遠ざけることが出来るのです。

 

例えば、糖尿病の合併症に神経障害が有りますが、その場合、感覚が鈍磨し痛みが感じ難くなり、怪我をしても痛みがないので気付かず、生命の危険が有ってもその状況を察知できなくなるのです。

また、偏桃体が機能しなくなり、痛みに情動が伴わなくなってしまっても同じように危険を避ける行動が出来なくなってしまいます。

扁桃体では、「刺激とそれから予測される嫌悪的な出来事」に対し、恐怖行動(硬直 や呼吸と脈拍の増加、ストレスホルモンの放出など)を引き起こします。

偏桃体が機能しなくなると、痛みに情動が伴わなくなり、恐怖や嫌悪を感じる事もなくなり、危険を避ける行動が出来なくなるのです。

*アルツハイマー型認知症の方の脳では、偏桃体の萎縮が見られます。

痛みが不快と感じることは、生命を守るために大切な事なのです。

しかし、後でご説明しますが、痛みに情動が加わる事が、受けた刺激を実際以上の強さと脳が判断してしまう時も有るのです。

 

余談ですが

知り合いの88歳になるお母さんの話で、数年前から認知症になり今は介護施設に入られているそうです。

施設内では、入浴の介護が必要なだけで、それ以外の事は特に手を貸す必要がなく生活されているのですが、ただ記憶が衰え、数時間前のことも忘れてしまう状態だそうです。

その方が乳がんになられ手術をされた時のことですが、手術直後は麻酔による錯乱もあり痛みを強く訴えられてたそうで、それも数時間立つとなくなり、おとなしくなられ、翌朝、本人に痛みについて尋ねたところ、全く手術のことも覚えておらず、痛みも「どこが?」状態だったそうです。

 

疼痛制御機構

人間には痛みを伝えるだけではなく、痛みを抑える働き、疼痛制御機構が有ります。

この作動基準の一つが「自分にとって感じることが利益をもたらすかその逆か」です。

今話題の貴乃花の鬼の形相、足を怪我しながらも千秋楽で武蔵丸との横綱対決に勝って、当時の小泉首相の「感動した」の名台詞を生んだ一番なんかもこれが働いたように思います。

彼の身体は、痛みを感じることよりも相撲に勝つ事を、あの勝負の間優先させたのです。

彼の勝負にかける気持ちが、痛みを感じる自己防衛本能より優先した結果だと思います。

私たちも、同じようなことを経験することが有ります。

「痛いところを手で摩ると、痛みが軽減したり、楽しい事好きなことに熱中している時、痛みを忘れていた」って言うことがないでしょうか?

その様な時には、疼痛制御機構が働き、痛みの伝達がコントロールされているのです。

 

また、複数の痛みを同時に感じることは有りません。

痛みのすべてを感じることを脳が避け、常に一番強い刺激を感じる様にコントロールされているのです。

一番の痛みが治まると、二番目だった痛みが一番になり、その痛みを感じ出すのです。

これは「気になる事」とも同じです、一番の心配事が解決すると、その陰に隠れていたことが気になりだす様に、本能的にコントールしているのです。

そんな経験思い当たりませんか?

 

厄介なのが、脳の誤作動による痛み

繰り返しになりますが、痛みは身体の異常を知らせる警報です。

なので、本来、痛みの原因がなくなればその警報は鳴りやむ、痛みを感じ無くなるのはずです。

しかし、時には、それでも、警報が鳴り続け、痛みを感じ続けることが有ります。

その時は、痛みを伝える機能に誤作動が起こっているのです。

痛みが発生すると、交感神経が緊張し血管を収縮し、筋肉は酸欠になり硬直します。

すると、さらに「痛み物質」が生じ、交感神経が刺激されます。

痛みは、痛みそのものの刺激によって、増幅されやすい性質があるのです。

これが繰り返され悪循環のループに陥ると、痛みは「慢性痛」になってしまうのです。

本来は、怪我や疾病の回復により疼痛抑制機能が働き鎮痛効果を持つ物質が発生し痛みを鎮めるのですが、それが、正常に働かないと、痛みを感じ続ける状態になるのです。

これは脳の偏桃体が興奮しすぎ、不快な痛みの記憶を強め、痛みの信号を増幅してしまうことによるためなのです。

腰をかがめた時にぎっくり腰になった経験を持つ人は、腰をかがめるときに必要以上に神経質になり、偏桃体の暴走によって不快な記憶を増幅する事で、本来の痛み以上に痛みを感じ、全身に力が入り続け、かえって腰痛を引き起こす硬直を身体に作ってしまうのです。

偏桃体が痛みのシグナルを増幅し、痛みと関連する事柄に反応して恐怖が増幅されるのです。

*腰をかがめる。下のものをとる等

私は、靴を履くときの動きを見ると、ぎっくり腰の経験が有るか無いかが、かなりの確率でわかります。

腰痛の経験者は、腰をかがめることに、ある意味恐怖を感じています。

この様な、心理的なことが原因の信号エラーで起きている痛みには鎮痛薬の類がほとんど効きません。

原因不明の痛みが長く続くと、不安になりさらに痛みは増幅してしまいます。

その様な場合は、一度信号の誤動作を正す必要が有るのです

心理的なストレスが、不快な痛みの信号と認識され痛みが出てしまったり、些細な痛みでも過敏に神経が反応して激しい痛みのように感じてしまったり、もう痛みはないはずなのにいつまでも痛みが消えなかったりするのは、いずれも、信号エラーによる神経の誤動作が原因なのです。

 

痛みの原因は3種類に分けられます。

  1. 侵害受容性疼痛
  2. 怪我やけど、五十肩腱鞘炎関節リュウマチ等日常生活で起こる炎症を伴う痛み。
  3. 神経障害性疼痛神経系統の何らかの障害が原因
  4. 帯状疱疹、神経痛、三叉神経痛、糖尿病性神経障害、座骨神経痛、脳卒中、脊髄損傷など
  5. 心因性疼痛 
  6. 器官や組織に病変が見られない心理的な要因からの痛み。

痛みを感じている患者は、心因性の疼痛だと言われても納得しません。

かえって、「心が弱い」と患者を傷つけるだけで、心因性と言う診断は、ほとんどの場合役に立ちません。

 

腰痛の85%は原因不明です

厚生労働省の調査では全国の腰痛患者は推定2800万人、その85%がX線MRI検査その他検査では原因が特定出来ないそうで、その原因不明の腰痛の多くが「心理社会的な要因が影響している」ことが明らかになっています。

職場でのストレス、家族関係の悩み、人間関係からくるストレスETC

自分でも意識していないうちに積もり積もって腰痛をはじめとする身体の痛みに置き換えられ出現することがわかって来たのです。

そのことから、痛みに対するメンタルのかかわりをもっと前向きに考える必要が有るように思います。

 

私は、経験と予測が痛みを倍増すると考えます。

また、心因的な問題が、その置き換えとして様々な痛みを生み、その原因である心因的な問題を解決することでその痛みを消すことが出来るとも考えています。

 

その手段の一つがカウンセリングなのです。

カウンセラーは、クライエントの話を傾聴し、その想いを受容し、共感し、共感した想いを、クライエントクライエントの言葉で反復(おおむがえし)します。

するとクライエントは、漠然と持っていたその問題を目の当たりにし、その結果、問題を明確にする事が出来ます。

そして、クライエントは、明確にできたその問題をなんとか解決しようと、それと向き合う気持ちが湧いてきます。(対決)

その時、そばにいてそれを助け見守るのがカウンセラーの役目です

この事を当講座のカウンセリングでは基本に考えています